書籍「誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣」から、内容を一部ご紹介しています。
DXへのステップにすぎないペーパーレス実現すら難しいことがある日本の製造業。その理由を考察します。
日本人の器用さがデジタル化とDXの阻害要因に?
DX推進に向け、「紙をなくすことから始めましょう」と顧客企業にいくら強調しても、理解がなかなか進まず、逆に日本人の器用さがデジタル化とDXの阻害要因となっている部分もある。
例えば現場の製造工程では、細かな作業手順や部材などの情報が盛り込まれたA3サイズの紙の製造指示書がよく使われている。一部の企業では工場のデジタル化を進める一環で、こんな要望を当社に投げかけてきた。
「これまでの紙の製造指示書のやり方を残したいために、製造指示書をタブレット画面に表示するアプリを作ってほしい」というのだ。
デジタル化の本質への理解
さすがに、「それはあまり意味がないですよ。ペーパーレスのために紙をPDFにするのと同じですよ」と先方には伝えたのだが、デジタル化の本質である情報をデジタルデータ化すること、そしてそれを検索や分析といった手法で活用していくことの重要性が、モノづくり企業の間で共有されていないという事実に改めて驚かされた。
それでは、デジタル化やDXに対する製造業の関心が高いにもかかわらず、なぜ企業は紙の業務をなくせないのか。
理由を考えると、実際にはデータの活用までまだ意識が及んでいないのかもしれない。それには仕方がない部分もある。
製造業の現場作業者は、どうやってモノを作るかという部分に最大限注力しているため、ITのことをきちんと理解している人は少ない。デジタル化とは、単にアナログの情報をデジタルにすることではなく、「データとして保管しましょう」ということだとわかっていないのだ。
「誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣」
- 著者:荒谷茂伸
- 出版社:日刊工業新聞社
- ISBN:4526083410,978-4526083419
- 日刊工業新聞社サイト:https://pub.nikkan.co.jp/book/b10084461.html
- amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4526083410