書籍「誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣」から、内容を一部ご紹介しています。
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これまでの情シスの仕事とは、SAPに代表される基幹系情報システムのERP(統合業務パッケージ)を導入し、運用するのがメインだった。こうした活動が始まったのは1990年代以降のことである。
一方で、国内のIT業界を中心に衝撃をもたらしたのが、経済産業省が2018年の「DXレポート」の中で報告した「2025年の崖」と言われている。
これは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存の古いシステム(レガシーシステム)を使い続ける企業が、国内に多数存在することのリスクに警鐘を鳴らしたものだ。
同レポートでは、こうしたレガシーシステムがDXの阻害要因となるばかりでなく、デジタル化の国際競争で日本の足を引っ張り、2025年以降に既存システムが残存することによる経済損失が、最大で年間約12兆円にも及ぶ可能性を指摘した。
レガシーシステムの保守・運用より新しい価値創造を
レガシーシステムを使い続けることは、システム会社に対して年間1億円あるいは2億円という保守費用を継続して支払い、古いシステムを運用し続けることを意味する。こうしたレガシーシステムに対して、新しいことを試みようとする情シスの人はほぼいないだろう。
同様に、製造業に入社して情シスをやりたいという人もほぼ見られない。新しいことをやりたいならIT業界やスタートアップに行ったり、自ら起業したりするはずだからだ。
つまり、製造業における情シスは花形の組織ではない。ただし、これからの製造業の中のDX推進部門は花形部門にならなければいけない。
つまり、古いレガシーシステムが止まらないよう保守・運用するのではなく、新しいことを創造するシステムの人たちが必須になる。前項で、大手IT企業出身者を入社させてDX化に踏み切った事例に触れたが、チームづくりでも社内だけではなく社外の力も借りながらベストチームを立ち上げ、やっていかなければいけない時代を迎えている。
その関連で言うと、製造業がIT企業に出資や投資するようなことも頻繁に起こってくるのではないか。
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その他、この節の小見出しはこちらです。気になる項目があればぜひ書籍にてお読みください。
・付加価値を引き出せるITサービスが見えているかどうか
・固定観念に縛られず発想を広げる
「誰も教えてくれない製造業DX成功の秘訣」
- 著者:荒谷茂伸
- 出版社:日刊工業新聞社
- ISBN:4526083410,978-4526083419
- 日刊工業新聞社サイト:https://pub.nikkan.co.jp/book/b10084461.html
- amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4526083410