吊り具点検をTULIPでデジタル化し工数8割減 -DMG森精機株式会社

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製造業

業務を円滑に進めるため、また安全な労働環境を維持するためにも欠かせない現場の点検業務。
今回は、法令で義務付けられており作業漏れが違反にもなりかねない「吊り具の点検」について、製造現場改善を支援する「TULIP」でデジタル化に成功したDMG森精機様 伊賀事業所のケースをご紹介します。

この記事のポイント●点検のばらつき・漏れを、限度見本などをその場で画像とともに表示させ解決
●管理者による点検実施状況確認を自席からのリアルタイム確認・承認可能にして解決
●点検記録の保管スペース確保の問題や、過去の点検記録確認の手間を書類の電子化で解決

点検にも、その確認にも手間をかけていた「紙の点検簿」時代

点検の手順は大きく2つの工程に分かれており、点検者による点検・記録と、管理者による点検結果の確認・承認があります。工程自体はTULIP導入前後で変わりませんが、実際の作業面では大きく改善されました。

紙の点検簿イメージ

以前利用していた点検簿のフォーマット(画像はぼかしています)

まず、TULIP導入前の流れです。
点検は、各点検場所に備え付けられた紙の日次・月次点検簿に手書きで結果を記録していました。長年続けられてきた作業ですが、各項目を正しく点検できているかは作業者の知識やスキル、経験に頼る部分がありました。

また、そもそも何をどういった基準で点検するのか不明確、点検簿自体が細かいため項目がわかりづらい、といった意見も出ていました。
その後、管理者が全点検簿を毎営業日確認して承認を行う必要があります。管理場所が24か所あり、巡回だけで30分以上かかっていました。
点検漏れがあった場合には再点検をするため、さらに時間をかけての対応が必要です。

点検記録はISO文書管理規定に基づき数年間保管する必要があるため、大きなキャビネットを丸々使い切るくらいの量になります。また、点検記録は毎月約200枚が新規に発行されるため、古いものを処分して差し替えたり、点検場所に新たに印刷したものをセットしたりといったことも負担になっていました。

点検者・管理者それぞれの作業に沿ったアプリを作成

これらの課題解決には、すでに社内で導入されているTULIPが使えそうだと考えていました。より効果的に活用できるよう、品質管理手法の新QC7つ道具から「系統図法」を用いて手段・方策の検討を進めました。

TULIPは作成するアプリ数に制限がないので、まずは業務に応じて点検者・管理者向けのアプリを作ることを決め、それぞれのアプリで課題解決に効果的な内容を絞っていきます。

点検者用TULIPアプリ画面

点検者用TULIPアプリ。実例や点検個所を画像とともに表示

点検者側アプリでは特に以下の点を考慮しました。

  • 点検項目毎に詳細な点検方法を明示

紙運用ではかさばり実現困難ですが、デジタルに変えることで
わかりやすい点検方法を明示しながらの点検作業を実現

  • より正確な合否判断

デジタルノギス、デジタルトルクチェッカーといったデジタル計測器と連携することで、計測結果の自動取得、及び合否判断を自動化し、人による誤判断を極力減らすようにしました。
また、人の目視判断についても限度見本を画像で提示し、より正確な合否判断ができるようにしました。

 

管理者用TULIPアプリ画面

管理者用TULIPアプリ。ダッシュボードには点検状況などがまとめられている

管理者側アプリでは特に以下の点を考慮しました。

  • 自席で容易に進捗確認

アプリ上にリアルタイムに点検結果一覧を表示させ確認・承認を可能に。
使用継続NG連絡は点検者アプリからの自動発信メールで受信。アプリ上で判定

  • “点検表の管理”→“点検物の管理”への業務プロセス改善

“点検表”毎の管理から“点検物”毎の管理に視点を拡げ、TULIPでワークフロー化したことで、単純な点検作業だけではなく異常発生時の連絡や修理・更新といった、導入から廃棄に至るまでの一連の業務プロセスを集約することで間接業務の工程集約を実現

管理者の工数は8割削減!作業標準化も実現

こうした形で業務をデジタル化したことで、大きな改善につながりました。
管理者側では、毎日35分かかっていた作業が6分ほどと、8割以上の時間短縮となっています。

点検者側では、知識やスキル、経験による作業のばらつきを抑え、標準化につながりました。これは、点検個所・方法や廃棄の実例、作業標準や限度見本などをTULIPアプリ上で画像も交えて記載できたためです。

もちろん、各メーカーの取扱説明書などはこれまでもありましたし、点検の詳細もまとめてあり、誰もが見られる状態ではありました。ただ、アプリ上から、その場で今の作業に即したものをすぐに見られる形になり、アクセシビリティーが段違いに良くなっています。紙の限られたスペースでは到底実現できなかったことです。
散見されていた点検漏れも全くなくなりました。必要な項目を入力しないと作業を完了できないよう、TULIP側で制御できることがポイントとなっています。

紙の点検簿で発生していた、用紙の汚れや個々人の筆跡による読みにくさ、印刷・交換や保管場所といった問題ももちろん解決し、ここまで業務が変わるのかと驚いています。

また、デジタルツールとの連携や、将来的な機能拡張性の高さも魅力の一つです。 TULIP社は日々新たな機能開発を進めているため、限度見本を用いた目視確認も、将来的には画像診断で自動化できるのではないかと期待しています。

SDCAとPDCAのサイクルを回してさらなる業務改善へ

改善から標準化まで達成できたことに満足せず、一層の業務改善につなげていくのがネクストステップとなります。TULIPでステップごとの点検時間が見える化できるので、点検作業自体の改善や、そもそもの吊り具本数の削減・最適化を検討していければと思います。

吊り具の不良個所も画像で明確化されることで、吊り方や吊荷を改善するための材料にもできそうです。 TULIPを活用したデジタル化を通じ、効果的な業務改善に今後も取り組んでいきます。


DMG森精機株式会社URL
https://www.dmgmori.co.jp/

※掲載内容は原稿掲載時のものです。

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