夜間無人稼働を可能にしたTULIPでの機内測定データ連携

  • DMG森精機株式会社
製造業

製造現場DX実現プラットフォーム「TULIP」を幅広く活用しているDMG森精機株式会社。紙を単にデジタルに置き換えるのではなく、広い視野で業務効率改善につながるデジタル化に取り組み「DX」へつなげています。
今回は、デジタル化・組立生技室デジタル化推進グループの野口大輔様にお話を伺いました。

ポイント◦ 機内測定データをTULIPへ直接取り込み、自動化システムを長時間稼働
→ 夜間無人運転が可能になり設備稼働率向上
◦ 機内測定データと加工現品をTULIPで紐づけ、転記作業不要に
→ 手間もミスも撲滅

操作盤を目視、チェックシートに手書きで作業が止まる!

タレット加工の自動化システムにおいて、加工完了ごとに作業者が操作盤を目視で確認し、機内の測定結果を紙のチェックシートに手書きで転記していました。
加工自体は無人で連続して行えるものの、人手が必要なこの転記工程がネックとなっており、チョコ停の発生が避けられない状況でした。夜間など長時間の無人加工は当然ながら行えません。

産業機械からTULIPへデータ自動出力。長時間の無人運転を実現

この作業を分解して考えると、機械内に存在する測定結果(データ)を人の目と手を介して別の場所に保存しているだけです。データのまま直接保存できれば人手は不要となります。また異常値が出た際も、測定結果の範囲に応じて管理者に連絡をするなどの対応は決まっており問題はありません。
そこでNCプログラムについて調べたところ「DPRINT(※)」という出力用の関数があったので、これとTULIPを連携させることで自動化への取り組みを進めることにしました。
連携に際して社内システム環境やセキュリティポリシーを考慮し、次のような流れでデータの自動保存を行っています。

1.NCプログラムからDPRINT(※)で出力したデータを社内サーバーに保存
2.ローコード開発ツールのNode-REDを用いてTULIP上のテーブルに自動保存
※DPRINT:産業機械・測定機等で座標系制御に使われる、NCプログラムで用いられる出力用の関数

工作機械とTULIPとのデータ連携

システム構成イメージ

 

産業機械や外部システムとのデータ連携を柔軟に行えるのがTULIPの利点だと感じました。TULIPには連携のためのAPIも用意されていますが、今回は社内サーバーに保管されたデータをNode-REDを用いてTULIPに取り込む形にしました。データ連携に限りませんが、専門家でなくとも自由度の高い開発ができるのがうれしいですね。
また、サーバーの利用・設定などについては社内の情報システム部門に依頼して対応してもらっています。ローコードでの開発も、思った通りに動かないときなどソフトウェア開発部署に助言を仰ぐこともありました。おかげで2か月ほどで稼働でき、DXは自部門で完結せず、社内を巻き込んでいくことが大切と実感しています。
機内計測データをTULIPで自動収集することで、作業者がいる昼間しかできなかった仕上げ加工を、夜間、休日等の無人の状況でも生産が行えるようになり、設備稼働率の向上に繋がりました。

現品と測定結果の突合作業もTULIPで自動化

産業機械での測定については測定データと加工現品との紐づけも課題でした。これまでは、パレット番号や現品に刻印された部番を確認、測定結果と手作業で突合し、シートに記載する必要がありました。転記するのも手間ですが、部番などの転記ミスや突合ミスがあればあらためて現品を確認しなければならず、非常に時間がかかってしまいます。

無人運転の時と同様にTULIPを活用することで改善できると考え、次のような構成・開発を行いました。突合して手作業で情報を記載する手間、さらにミスの心配もいらなくなりました。加工現品に関する情報も自由に出力でき、今後管理方法に変更があってもTULIP上で対応可能すればいいだけというのも安心材料です。

1.NCプログラムから刻印内容やパレット番号をDPRINTで出力しTULIP上に自動保存
2.TULIPアプリ上で、測定結果と1の情報を紐づけ

加工現品と測定結果との自動紐づけ

刻印部番やパレット番号一覧をTULIPアプリに表示

テンプレートとして現場で横展開も可能に

改善例を2つお伝えしましたが、DPRINTを活用した産業機械とTULIPとのデータ連携については同じアプリを活用しています。この構成は様々な分野で活用できると考え、今回の自動化で満足せずに横展開を行っています。
たとえば、新しい手順書やチェックシートを作る際、これまでは部番や工程ごとに個別にTULIPアプリを作成していました。上記のデータ連携をこれらのアプリ作成にも活用し、DPRINTから機内測定データをTULIPに自動保存させることでマスタアプリのみで対応できるようになっています。
一つの改善を他の現場でも活用・展開できるのは、業務アプリを自分たちで作っていけるTULIPならでは。今後も社内の各部門と連携しながら、TULIPを活用してDXへの取り組みを進めていきたいと思います。

※内容・記載の部署等は取材時のものです。
※Node-REDは,OpenJS Foundationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。

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